特定非営利活動法人東洋蝙蝠研究所の趣意

【設立趣意書】
設立趣意書 平成12年3月
1 趣旨
多様な自然環境を保持することは、日本の将来に向けて重要です。その自然環境をできるだけ保全しつつ後世に残す事ができるのかどうかが、私達に課せられた大きな命題です。
多様な自然環境の中で、コウモリ類は夜間の自然環境について重要な部分を担っています。森林や原野等の多様な自然環境の中に高度に適応して生息する小型コウモリ類は、夜間に蚊やガ等の飛翔昆虫類や地表の昆虫類また蜘蛛等を大量に捕食しています。夜の生態系の一翼を担う重要な哺乳類のコウモリ類は、昆虫類の大発生を適正にコントロールして、多様な生態系の均衡を維持しています。しかし、保全の必要があるにも係わらず今まで積極的にコウモリ類の保全の手段が講じられたことは少なく、現在でも分布調査や生態調査についての調査・研究は進んでいません。早急に、コウモリ類の保全の為に生態調査や分布調査等の研究を、広範囲かつ継続的に進めて行く必要があります。
また、過去コウモリ類の生態や生理についての研究は他の哺乳類に較べると遅れていました。しかし、最近、コウモリ類の生態や生理の研究が世界中で進み、コウモリ類は、人類の未来に大きく貢献する可能性を秘めた哺乳類だということが判ってきました。例えば、心臓のペースメーカや人工弁を使用している人が飲んでいる止血剤について、より安全で副作用や食事制限の少ない新しい薬剤が開発できないかと血吸コウモリ(バンパイア)の唾液中の抗血液凝固因子を研究しています。また、脳や心臓、肺の外科手術時に、安全で長時間にわたって患者の体温を低下させて手術することができないかと、小型コウモリ類が冬期に体温を下げる冬眠システムを研究をしています。小型コウモリ類が出す超音波を、盲人の杖の代用に軽量で小型の障害物感知装置ができないか等の研究も進んでいます。以上の様に今後コウモリ類の生態や生理についての研究は、人類の未来に大きく貢献する可能性が有ります。
私達は、このようにコウモリ類と多様な生物が生息する自然環境をできるだけ保全しつつ、未来へ引き継いで行く必要があります。早急にコウモリ類の保全の為にコウモリ類の現況について生態調査や分布調査が必要です。
特定非営利活動法人東洋蝙蝠研究所は、多様な自然環境の保全を図る為に、夜間の重要な一翼を担うコウモリ類について、日本及び近隣諸国のコウモリ類の保全に必要な調査・研究活動を行います。
また市民に対しコウモリ類の科学的な知識の普及啓発活動によって不特定多数のものの利益の増進に寄与することを目的として設立します。
2 設立に至るまでの経過
約10年前
コウモリ類の研究者やコウモリに興味がある人が集まり任意団体「コウモリの会」が結成されました。現在約300名の会員が参加しています。
平成10年夏
青森で高校生達によりヒナコウモリが多数殺されたことにより、「コウモリの会」の有志達からコウモリ類を保全する為の組織の必要性が提言されました。
平成10年 秋期
主に青森の事件の有志達と研究者とフィールドワークをしている者が中心となり、上記のような問題点や課題を解決するために「コウモリの会」を母体に非営利の組織の設立が検討され、設立準備を始めました。
平成11年 夏期
国や都道府県からのコウモリ類の分布調査の依頼や、航空会社の地方空港のコウモリ類防除プログラムへの協力依頼等から非営利組織の立ち上げが緊急に必要となり、東京都庁や神奈川県庁の実施した「特定非営利活動法の説明会」に参加しました。
その後、秋期まで継続して定款の作成、賛同者の確認、設立趣旨書の検討、活動内容や活動範囲の確認等の提出書類について有志達で検討しました。
平成11年 秋期
設立趣旨書、役員の人選、設立時の会員の同意、提出様式等の検討を行い、長野県南安曇郡安曇村乗鞍高原の長野県乗鞍自然保護センター内で設立にむけてシンポジウムを開催しました。